ワイヤレス充電技術:2020年の現在地 (作家シリーズ Vol. 2)

Wireless Charging Technology: Where Are We In 2020? (Writer's Series Vol. 2)

スマートフォン市場は、数年にわたりワイヤレス技術とオンオフの関係を築いてきました。この流れにより、業界ではスマートフォン仕様の一部であるアドオンアクセサリーに絶え間ないアップダウンを加えてきたのです。最新のスマートフォンがワイヤレス技術とこの技術がもたらすすべてのメリットに目を向けている今、世界はスマホ充電の未来はワイヤレス充電方式であるとの考えが広がっています。最新のGoogle PixelSamsung GalaxyHuaweiスマートフォンが先導し、続いてAppleもこの止まらない新しい流れに続いています。

ワイヤレス充電の一般導入を阻んだ理由の1つとしては、使用された規格が挙げられます。しかしこのネガティブな要素も終わりを迎えるかもしれません。Qi規格は、ほとんどの携帯電話会社で採用されているワイヤレス充電方式です。現時点で、この規格はすべてのワイヤレス充電製品の約90%を占めており、これにより市場が断片化するのを防ぎ、メーカーはワイヤレス充電における自らの立場を理解し、自信を持って前に進み、ワイヤレスで充電に対応する優良な製品を作ることに力を注ぐことができているのです。

規格にまつわる流れ

多くの新規テクノロジーがそうであるように、ワイヤレス充電市場においても何年にも渡る覇権争いが繰り広げられてきました。このテクノロジーに起因する収益は莫大であるとみなされ、業界の主要プレーヤーは市場を独占しようと試みたのです。しかし、結果的にその行動は、メーカーとその後に続く消費者を決断できない状態に陥らせてしまいました。

SamsungAppleQi テクノロジーを採用したところで、この技術が充電の将来になることは避けられない状況になりました。現在ではQiワイヤレス充電製品の普及が進み、WPC(Wireless Power Consortium)は、長年にわたって業界規格の開発に取り組むことで、プレーヤー全員が共に進むことができるようにしています。

技術の仕組み

スマートフォン市場の大手企業がこのテクノロジーを採用する前からQiは業界で高い評価を得ていましたが、一方で、充電装置は誘導充電技術に基づいており、かつては範囲が狭く非常に扱いにくい場合があると言われていました。

誘導技術は、「オフレゾナンス」周波数の発生を抑えてきつく巻いたコイルを使用しており、これが電荷の転送を効率的にしています。電力を伝達するには非常に効果的ですが、一方で、コイルの位置ずれが問題になりやすくなります。簡単に言えば、デバイスと充電器は互いに近接している必要があるということです。もっと詳しく言えば、デバイスと充電器は45mm以内の距離である必要があり、距離に関係なくスマートフォンを充電できるというのはまだ夢の段階です。

ワイヤレス充電キットが機能するために必要となる次のステップは、デバイスと通信し電力管理を制御するために、送信周波数と接続プロトコルを管理することです。

Qi充電は最大15Wの電力をサポートしており、これはスマートフォンが登場して以来、ほとんどのスマートフォンで使用されているものです。

レゾナンス技術

特定のメーカーによって開発されたものの、スマートフォンにはまだ普及していない代替品としてレゾナンス技術というものがあります。

レゾナントパワーのメリットの1つは、誘導技術よりも長い距離で機能するという点です。45mmから数インチまで範囲を拡大することができ、コイルを使用して磁場を生成しながら、充電器とデバイス間の振動のピッチを調整します。これにより、誘導充電の厄介な性質が排除され、デバイスの磁場の向きが問題にならないため、複数のデバイスを同時に充電することも可能になります。

デバイス

ワイヤレス充電技術の開発は順調に進んでいますが、メーカーは同じように機能するデバイスを必要としています。例えばAppleQi 技術をすべてのデバイスで採用し始めました。また、他の主要プレーヤーの一部は、Qi 技術およびPMA(Power Matters Alliance)でも使用できるデバイスを所有しています。PMAは別の代替手段であり、SamsungLGなどのスマートフォンではQiPMAの両方で使用できます。しかしながら最近では、この傾向はQi規格に統一される動きが加速しています。

ワイヤレス充電がさらに普及するにつれ、将来の道のりがさらに見えてきます。スマートフォンは、ワイヤレス充電を考慮して構築された最初のデバイス製品です。しかし今後はスマートフォン以外でもワイヤレス充電を取り入れるデバイスが出現してくるでしょう。

2020年とその後

電波技術は、ワイヤレス充電の将来において非常に重要な役割を担う可能性があります。この技術のバックグラウンドにある考え方は、デバイスをより遠くで充電できるという点です。簡単に言えば、使用中にスマートフォンを充電できるというような世界です。

初期の提案では、1.5ワットの電力で最大4メートルの範囲でデバイスを充電できると言われています。これは私たちが既に慣れてしまった急速充電とは異なるものですが、常に充電している状態であると考えれば、同じレベルの電力は必要ありません。しかし、この技術を一般化する前に、人体に有害であるかどうかの検証とともに技術的改善が必須です。

ワイヤレスを選ぶべき理由

私たちは既に有線充電に慣れきっています。ベッドの横に差し込み一日中使えるように充電をするという行動は、多くの人にとって生活の一部となっています。ワイヤレス充電は現状そこまで一般に広がっているとは言い難いのは事実です。しかし、その主な要因は、技術の開発方法にあるのです。多額の資金が投入されていることから、コンセンサスを構築することが困難であったのです。

しかし主要プレーヤーによる覇権をめぐる戦いの時代は終わりに近づいています。業界が覇権争いを終えれば、メーカーと消費者はワイヤレス充電の流れに乗ることができます。ワイヤレス充電には、有線充電と比較して多くのメリットがあり、充電の未来はワイヤレスになると言っても間違いではないでしょう。あとはその未来がどれだけ早く訪れるのか、という点なのです。